少し前に、大原扁理『年収90万円で東京ハッピーライフ』(太田出版)という本がYouTube番組「中田敦彦のYouTube大学」で紹介され、話題を集めた。
動画では中田敦彦氏が「いかに働かずに自由に生きるか」を熱弁し、週に2日だけ仕事をして、年収90万円で東京(多摩)生活をしている大原扁理氏の生き方をとにかく絶賛していた。

週に2日介護の仕事をして、多摩で駅から徒歩25分の5畳ワンルームに住み、金を使わないために友人とは会わず、娯楽は図書館と散歩、食費は1日300円までで、基本的には玄米と味噌汁、「たまに」漬物やサバを食べる。これだけでは、成人に必要な1日あたりの栄養素には到底届かないことは明らかだ。栄養失調から、いつ病気になってもおかしくない。
もはやこれはハッピーライフというより、ほとんど社会からの「孤立」である。憲法の定める「健康で文化的な最低限度の生活」とはほど遠い。
YouTubeで登録者数400万人を超えるモンスター級インフルエンサーが、社会とのつながりを絶って孤立化することを声高にすすめ、生活保護の受給要件(都内・単身者世帯の場合)を大きく下回る生活を後押ししている姿は、あまりにも恐ろしいものだった。

動画内では先ほど私が指摘したようなリスクにはまったく触れず、むしろ「生活のために週5で働いている人」がまるで不正解であるかのようにシナリオを作り、貧困生活に誘導しようとしていた。
「『もっと楽をして生活したい』と思ったから、この動画にたどり着いたんでしょう?」や「嫌いなことをして死ぬな」と次から次へと多弁に、大げさな仕草で視聴者に語りかけるのことを、私は心底「怖い」と思った。
その動画を見ている人々が「今の生活がつらいと感じて動画にたどり着いた」と「理解している」にもかかわらず、彼ら彼女らを自らの食いぶちとして、人を人とも思わず、利用してうまく口車に乗せて私腹を肥やそうという悪意そのものが、本当に恐ろしいのである。
引用元: https://girlschannel.net/topics/3621172/続きを読む